2011年3月17日木曜日

東日本巨大地震

311日に発生した東日本大震災は東北地方を中心に深刻な被害をもたらした。さらに、原子力発電所が危機的状況に陥っており、原子力事故による被害も非常に懸念されているところである。

 

 この震災が産業界に与える影響は甚大だ。被災地の企業が、地震や津波で直接的被害を受けたことは言うまでもない。それに加えて電力供給に大きな支障が生じたため、地震の直接的被害を受けなかった首都圏などの企業の活動にも影響が広がっている。さらに、消費マインドの急激な悪化により、今後は個人消費が大幅に落ち込むことが予想される。そして企業活動の停滞と消費の冷え込みにより、回復途上にあった景気が大幅に後退することは避けられないと考えられる。

 

 また長期的には、被災者救済や復興対策に多額の予算投入が必要となる。今後の税収も落ち込むと予想されるため、国や地方の財政が一層悪化することは避けられないであろう。

 

 また今回の原子力発電所事故により、原発の安全性への信頼が大幅に損なわれたことの影響も深刻だ。原発の復旧には物理的に時間がかかる。さらに、今後の原発の再稼働や新設に対するハードルは一段と高くならざるを得ない。よって今後の日本は、環境負荷が高く、価格の高騰が見込まれる化石燃料への依存度を再び高めざるを得ないであろう。

 

 今回の大震災は原発を含め、電力インフラに深刻な打撃を与えた。東京電力など電力会社は休止設備の再稼働などを含め電力供給能力の回復に努力するものの、それでも原発の穴を埋めることは困難であろう。このため東日本エリアの電力不足は、相当に長期化すると考えておく必要がある。

 

 電力は、あらゆるビジネスに不可欠なリソースである。そしてほとんどの企業は、必要な電力を安定的に調達できることを前提にビジネスの仕組みを形作ってきた。しかしこの前提は既に崩壊した。今後は停電により、工場設備、店舗、オフィスなどの稼働が停止するリスクを常に意識しておかなければならない。従って生産体制の組み換え、業務体制の組み換えなどにより停電リスクを最小化するための対策は、すぐに検討し実行に移さなければならない。

 

 また電力不足への対応は、個々の企業や個人の節電努力だけでなく社会全体で解決すべき問題でもある。有力な対応策の一つは、需要のピーク時の電力使用量を削減することである。このため企業が設備の稼働時間を、夜間や休日などにシフトすることが必要になってくるかもしれない。

 

 リソースの不足は電力だけに留まらない。現在東日本エリアでは、多くの分野で生産活動が滞っている。そして電力不足は、生産活動の回復にも水を差す可能性が高い。このため原材料や資材などの調達に支障が生じることも、当然のこととして想定しておかなければならない。

 

 首都圏を中心とする交通マヒの問題も深刻だ。一部企業では社員が出社できず、業務に支障が生じている。また被災地及び周辺地域では、石油製品の供給が滞っている。ガソリン不足で自動車が使えなくなれば、多くの企業で社員が出勤できなくなる事態も考えられる。また燃料不足で、工場などの稼働を断念せざるを得ない企業もありそうだ。

 

 リーマンショック以降低迷が続いていた個人消費は、ようやく回復の兆しが見えつつあった。しかしながら今回の震災によって、消費者のマインドは極度に悪化していると考えられる。「大惨事が起きている時に、それどころではない」という消費者の意識が非常に高まっており、消費意欲は一気に冷え込んでいる。

 

 このためレジャー、高級品、耐久消費財などに対する需要が、今後著しく減少することは避けられない。それだけでなく、多くの消費者が外出を手控えていることも、外食や小売などの販売に大きく影響すると考えられる。具体的業種としては、小売、外食、交通、観光、レジャー、広告、不動産、自動車など、内需関連業種のほとんどが消費者心理の委縮の影響を受けると予想される。

 

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