2011年5月26日木曜日

中国版ツイッター『ウェイボー』がもたらす正の面、負の面

 「ウェイボーには『私信(スーシン)』(プライベート・メッセージ)と言う機能がある。相互にフォローしている2人の間では、公開されない、秘密のメッセージを送りあうことができるだろ? これが携帯電話のショートメッセージの役割を完全に取って代わっている」

 「中国人はそもそもパソコンの電子メールを使いたがらない。そこを考えれば、ウェイボー私信がなぜコミュニケーションの主流になりつつあるのか容易に理解できる」

 なるほど、中国版ツイッターであるウェイボーには、TWITTERやFACEBOOKと同様の機能以外に、携帯電話のショートメッセージに相当する機能がある。さらに、日本におけるMIXIのように"身内"でグループを構成し、内部会議を開く機能も併せ持っている。すべて無料だ。

ウェイボーにかかわる4つの側面
 「一つは、ウェイボーは何も政治的議論をするためだけに存在するわけではないこと。欧米のツイッターだってそう。コミュニケーションにおいて、中国人民も『個』を確立することができる空間が広がってきた——という意味では、ポジティブな現象だと思います。人民がみな政治的動物に化してしまうことのほうが恐ろしい」

 「二つ目は、ウェイボーが登場したことで、共産党当局がいい感じで圧力を感じていること。先ほどJ先輩は著名人と追っかけの関係を膨らませましたが、ウェイボーでは社会的な議論、言論の自由や人権を追究する議論もかなりなされている。統治者と被統治者の間の力関係が、ウェイボーを通じて徐々に狭まってきていると言えるでしょう。ウェイボーはきっかけなんです」

 「第3に、Jさんが指摘し、後輩のB君が呼応したように、この国の将来を見つめ、引っ張っていく真のエリートたちがウェイボーのような一種の消費文化に流されてしまうことは危険だと思います。エリートもウェイボーの動向をキャッチアップする必要はありますが、適度な距離感を持ってつき合うことが不可欠でしょう。ウェイボーやフェースブックよりももっとクローズで濃密な、バーチャルではなくリアルな知的空間を、深化させていく努力が求められています」

 「最後に、世界経済あるいは国際政治という、より大きな視点に立って問題提起をさせてください。特にリーマンショック後、欧米式の資本主義が懐疑的をもって見られるようになりました。かといって、中国的な国家資本主義を世界が受け入れるには時間がかかりそうです。各国が新しいメカニズム・価値観を模索しているのが今日の国際政治の状況です。つまり過渡期にある。そんな中、経済リベラリズムが衰退し、文化ナショナリズムが台頭することによって、故サミュエル・ハンチントン氏が主張した『文明の衝突』がいよいよ本格化していくのでは、ということを懸念しています。以上です」

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