2011年5月20日金曜日

SmartAR

 ARとは、カメラの映像に仮想的な物体を重ね合わせ、あたかもそこに存在するかのように振る舞わせる技術のこと。決められた画像の上にARを出現させるものや、位置情報を使うものなど、いくつかの方式がある。近年、スマートフォン向けに「セカイカメラ」などのARアプリが登場したことで注目が集まったが、技術は古くからあり、ソニーでは1990年代から研究している。
 新技術の見どころの1つは"マーカーレス"だ。画像認識型のARでは、ARを出現させるトリガーとして専用のマーカーを使うものが多い。一方、SmartARでは、ポスターやコップといった一般的な画像や物体をトリガーにできる。
 マーカーレス方式は一般的にマーカー方式よりも高度な計算が必要とされる。しかしSmartARでは、計算量の少ない独自のアルゴリズムにより高速に動作するという。Android端末「Xperia arc」で動く試作アプリでは、30fpsで物体をトラッキング。カメラや対象物の動きにARが自然に連動する。また、照明の具合などの環境変化に強いのも特徴だという。
 マーカーレスAR技術に、同社が「AIBO」や「QRIO」のロボット開発で培った"3D空間認識技術"を組み合わせたのも、SmartARの大きな特徴。ロボットが身の回りの空間構造をカメラで認識する技術や、自分が今どこにいるかを認識する技術などを応用して、従来よりも高度なARを実現する。
 これまでのARでは、トリガーとなる画像がカメラの視界から外れると、仮想物体の空間上に配置することができなくなる。このため、画像がカメラの視界に収まる範囲でしかAR表現ができなかった。しかしSmartARでは、カメラの視界からトリガー画像が消えても、周りの空間の変化を認識しながらARを正しい位置に表示しつづける。そのため、カメラの視界からはみ出るような大きなAR表現も可能になるという。
 3D空間認識技術を活用すると、ARのボールがテーブルをはねたり、現実の物の形にそってARの水が流れたりと、よりリアルな演出も取り入れられる。ARキャラクターが部屋の中を自由に歩き回るような世界も、将来的には夢ではないという。
 3D空間認識技術は、スマートフォンでは処理能力が足らず実現していない。しかし、端末の進化が速いことから、近い将来に搭載できるという。

 国内では2009年ごろから商用化の例が目立ってきているARだが、事業化には各社苦戦しているのが現状だ。ARの表現力がまだとぼしく、「顧客体験として"ちょっとおもしろいだけ"」にとどまっていることが、課題の1つと福地氏はみる。
 空間を高度に認識するSmartARでは、「より日常的で、快適で、リアリティーのあるARを提供できる」。特にゲームなどのエンターテインメント分野で、同技術が活用できるとみている。

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