2011年5月31日火曜日

BCPに関連して想定外に対応するのが経営者

最も重要なのはBCPでは想定していなかった事態に直面した時に、経営者が合理的な意思決定を迅速に行うことである。そのために平時に経営者を対象とした訓練を行わなければならない。

 こうしたトレーニングを実施している企業はそう多くはない。これでは、有事の際に想定外の事案に対し合理的な経営判断を行うための素地を経営者は養えない。また事前に策定したBCPや危機管理体制の有効性を検証することもできない。

 有事の際の経営判断に必要なネガティブ情報が経営トップまで早く正確に伝達されるか。トップは伝達された情報を基にどのように判断を行うのか。

 要となる経営陣を抜きにして、社員や現場を対象に訓練しても、いざという時に合理的な対応ができるかは疑問である。

 では、どのようなトレーニングを行うべきか。一般的には、社長をはじめとした役員全員を対象にするが、企業グループにおける危機管理体制の構築は親会社の取締役の義務であると会社法に規定されたことを考慮すると、子会社の役員も参加してグループで定期的に実施するのが望ましい。

 トレーニングではまず、地震などの自然災害や新型インフルエンザの流行、個人情報の大量流出などの不祥事、製造物責任にかかわる事故などが自社において発生したと想定する。

 現場責任者が事実確認や原因究明などの初期対応を行うとともに、社長に事態を報告する。社長は事態がどれだけ深刻かを判定し、緊急事態だと判断したら、危機対策本部の設置を決めてメンバーを招集する。

 社長は危機対策本部長として基本方針を決め、対策本部のメンバーは方針に基づいて個々の施策を実施する。個々の施策とは被害者、行政、取引先、顧客、株主、マスコミ対応、社内における情報管理などである。

 社長は個々の施策の経過や結果の報告を受け、事態の進展に応じてその都度、対応を指示する。記者会見が必要かどうかは社長が判断する。会見を開く場合には、誰がいつ、どのような形式で行うのかを検討し、模擬会見を実施する。

 さらに社長は、事前に策定したBCPの規定に基づいて、事業の再開を目指して対策を打っていく。

 ここまでの一連のシミュレーションに要する時間は5時間ほどだ。ポイントは、トレーニングを計画する事務局が、リアリティーのあるシナリオを作ることである。参加者が「これはあくまで訓練だから」という気持ちで臨むと、効果は半減してしまう。

 題材となるクライシスは、自社において発生確率が高い優先リスクを選び、事態の推移にもリアリティーを持たせる。トレーニングの際には、資料やクライシスについて報じた仮想記事などをモニターに映し出して、参加者に状況を説明するが、資料には実際に業務で使用している文書の様式を採用するなど、徹底してリアリティーを追求することが求められる。

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