市場環境がめまぐるしく変化している近年、企業にとって"コミュニケーション"が非常に重要なテーマとなっている。コンタクトセンターに代表される社外コミュニケーションなら企業ブランドに大きく響くし、社内コミュニケーションなら、効率的な意見交換や情報共有が、業務効率や製品・サービス開発などの面で収益に影響する。
これは日常を思い返してみると実感しやすい。例えば、あなたも消費者として企業に電話で問い合わせをしたことがあるだろう。その際、電話がつながるまで長時間待たされたり、ようやくつながったと思えばオペレータ間をたらい回しにされたり、といった経験があるのではないだろうか。IVR(音声自動応答装置)の長々としたアナウンスを最後まで聞き、IDや会員番号などを入力したにも関わらず、その後つながったオペレータにIDや会員番号を聞かれて、多少なりともイラっとしたことがある人もいるはずだ。
言うまでもなく、そうした体験は企業に対する印象を悪化させる。だが反対に、例えば「電子メールでの問い合わせ内容について後日電話をしたら、その内容がきちんと把握されていた」、あるいは「問い合わせがスムーズに解決された」となれば、企業への好感度は向上する。すなわち「スムーズかつ快適な顧客対応を行うコミュニケーション体制」があることが、収益やブランドを守るための重要なポイントとなるのである。
一方、社内で完結するコミュニケーションはどうだろう。こちらは電話や電子メール、グループウェアなどを使って部門内、部門間で必要な情報をスムーズに交換/共有できることがビジネス遂行の前提条件となる。このことは従業員が出社困難に陥るケースが多発した先の東日本大震災以降、あらためて認識する向きが増えたはずだ。
もちろん、単なるビジネスの遂行だけではない。上記の問い合わせ対応の例のように、「的確に回答するために、社内の関係者がスムーズにコミュニケーションを取れる体制」はロイヤルティ向上の面でも不可欠となる。特に近年は、商品開発部門のスタッフがカスタマーサポート部門のスタッフと日常的に意見交換するなど、業務プロセス上は直接的なつながりがない部門間でも意見交換を行い、「業務効率や収益向上に役立つ気付き」を得ているケースも少なくない。
つまり社内外を問わず、"スムーズにコミュニケーションが取れる体制作り"が、厳しい市場環境に対応するための非常に重要な鍵となっているのだ。
ここまでは多くの人が日常的に意識していることだと思う。ただ、こうしたコミュニケーションを行うためには、それなりの技術基盤が必要となる。そこで、もう少し「コミュニケーション」というものを掘り下げてみたい。
ここで考えたいのは、「コミュニケーションを円滑に行うためには、具体的にはどんな要件が求められるのだろうか?」ということだ。それは「相手に正確かつ分かりやすく情報を伝えること」ではないだろうか。これは長い間コミュニケーション手段の主役であり続けた電話をはじめ、インターネットの普及とともに浸透した電子メールやIM(インスタントメッセージング)などにも共通した要件だと言える。
では、「相手に正確かつ分かりやすく情報を伝える」ためには、どんな要件が求められるのだろう? ここで注目したいのは、「日本では文化的に"対面によるコミュニケーション"が重視されてきた」ということだ。それを念頭に置いてみると、まず言えるのは、対話という形で「リアルタイムに意見交換できる」ことだろう。
白板などを使って情報共有しながら説明した方が伝えやすいように、「視覚的に情報を交換できる」ことも挙げられる。さらに、ニュアンスも含めて情報を正確に伝えるために、表情や声の調子など「視覚と聴覚を同時に認識できる」といった要件も必要だ。また、円滑なコミュニケーションのためには、常に対面がベストとは限らない。よって、「相手や状況に応じて、3要件を使い分ける」というニーズも生じてくる。
さて、いかがだろう。このようにコミュニケーションに求められる要件を整理してみると、音声、電子メール、ビデオ会議システムといったように、技術の進展とともに"より対面に近い形へ"とコミュニケーション手段が発展し、使い分けられてきたことは、ごく自然な流れであることがあらためて実感できるのではないだろうか。
そして企業は、こうした"コミュニケーション手段のマルチメディア化"に対して着実に対応してきたことも分かるはずだ。その最も象徴的な例がコールセンターだろう。電話、電子メール、IM、チャットなど、マルチメディア化が進む消費者の動きに合わせて着実に顧客接点を確保してきた。特に近年は、TwitterやFacebookに代表されるソーシャルメディアで流れる情報をコールセンターで監視し、企業ブランドや収益向上に生かしている例も増えつつある。
社内コミュニケーションも同様だ。音声、電子メール、ビデオ会議システムはもちろん、昨今はiPhoneやAndroidといったスマートフォンを業務で利用して社員の機動性を高めたり、電話、電子メールのほか、ビデオ会議を使って出張コストの削減に乗り出す例が急速に増えている。こうした状況を振りかえってみれば、"コミュニケーション手段のマルチメディア化"のトレンドは、ますます強まっていくことが容易に想像される。
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