2011年6月2日木曜日

シンクライアント

端末に、記憶装置を持たないなど機能が"薄い"(thin)機器を使うことからその名が付けられており、企業や自治体の情報システムのセキュリティー強化や、運用までを含めたトータルコストの低減を目的に導入が広がりつつあります。

シンクライアントのシステムがセキュリティー強化に有効な理由のひとつは、データはサーバー上に保存され、エンドユーザーが使う端末の記憶装置に残すことが出来ないことがあげられます。エンドユーザーが端末のハードディスクにサーバーのデータをコピーし、各端末でデータ処理を行うというシステムでは、サーバーのデータを少なくとも一時的にはハードディスクに保存することになります。その場合、端末が外部からの不正アクセスを受けたり、端末またはハードディスクそのものが盗難に遭ったりすると、データが外部に流出してしまう恐れがあります。特に企業や自治体で個人情報等の機密情報を扱う業務では、データの外部流出は絶対に許されないことでしょう。

シンクライアントのシステムでは、データ処理はサーバーが行い、ユーザーはサーバーが処理したデータを端末上で参照するものがほとんどです。どのような処理を行うかはユーザーが端末から指示をしますが、データの保存と処理は常にユーザーの手元の端末ではなくサーバーに一元化されています。この点が端末にハードディスクを持たせたシステムとの大きな違いの一つと言えます。

システムの初期投資とその後の運用管理までを含めた総所有コスト、いわゆるTCO(Total Cost of Ownership)の削減にも、シンクライアントは効果的とされています。ハードディスクを持つ端末では、データ処理のためのアプリケーションをそれぞれに搭載する必要があり、そのインストール作業やバージョンアップ時にも大きな負担がかかることがあります。その際にも、全端末が正しくインストールやバージョンアップを行ったかを確認しなくては、組織内の共有文書を開くことができないなどのトラブルも起こりえます。またソフトの開発元からセキュリティー強化のための修正ソフト(パッチ)が配布されたときには、それぞれの端末で迅速に適用を行わないと、同一のネットワーク等でつながる他の端末も、思わぬ被害を受けるかもしれません。

一方シンクライアントのシステムでは、基本的にシステム部門が管理するサーバーにしかアプリケーションはありません。アプリケーションのインストールやバージョンアップなどはサーバーだけで済むため、運用管理にかかるコストを大幅に削減できる可能性があるわけです。

シンクライアントのシステムは環境貢献の面でも注目されています。一般的にコンピューターの中で特に電力を消費しているのは高速回転を続けるハードディスクですが、シンクライアントの端末はそのハードディスクを持ちません。また最近のデータセンターでは電力変換ロスを低減する直流給電システムなど、一般のオフィスビルでは導入が難しい省電力対策が進められているところが多いため、サーバーをデータセンターに置くような構成をとり、システムの物理的な稼働を端末からサーバーに集約することで、システム全体での電力消費も期待できます。加えてデータセンターでは、耐震設備やバックアップ対策も充実しているため、地震などでオフィスが被害を受けても端末を入れ替えればすぐに業務に取り掛かることができるため、シンクライアントはBCP(事業継続計画)の観点からも有効であると考えることもできます。

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