「自分が話す場合」について、人に何かを伝えるときには、聞き手に「期待する反応」を自分の中で明確に押さえておくことがキーです。つまり聞き手に「期待する反応」を導き出すためには、どういった道筋をつけながら、話を進めるといいのかを常に意識してコミュニケーションをします。
例えば、山田さんは、ある人に地球温暖化に関する因果関係の話をしているとします。山田さんの相手への期待は、自分の意見を伝えた上で、この方の考えている地球温暖化に関する因果関係に対する意見です。ところが、話し始めてほとんどすぐに、相手の方が、「地球温暖化問題で切り離して考えられないのは、環境保護・動物保護ですね。動物といえば、私、犬が大好きで、犬を虐待しているなんて話を聞くと心が痛むんです」とおっしゃったとします。この時点で、すでに山田さんが、自身の意図したことと違った反応に気がつけば、軌道修正をすればいいのですが、相手の話に夢中になってしまい、「いやあ、実は私は、鳥が好きでしてね」なんて言い始めると、話はどんどんどんどん外れていくわけです。
つまり聞き手から「期待する反応」を導き出すためには、どういった「根拠」を持ってきて、どういう論理を使って話を進めるかを意識してコミュニケーションをすることがポイントです。これはもちろんビジネスの場面でも同じです。
この際、「根拠」としては、「重複や漏れ」が無いように注意する必要と、「根拠」と「結論」の間に、「話しの飛びがなく、流れが明瞭である」(前回ご紹介したSo What?/Why So?となっている)ことが必要です。更に「根拠」と「結論」との間の「論理」が正しければ、相手に期待する反応が実現できるでしょう。こうしたちょっとしたフレームワークを頭に置いて話をするだけで、よりロジカルにコミュニケーションができます。
ここまでで「難解だな」と思われた方いらっしゃいますか?実は、我々は日頃、知らず知らずのうちにこれをやっています。例えば、人の話を聞いていて「ん?」と思われたこと、ありますよね。それは、上記のプロセスを知らぬ間に実行しているためです。あとは意識して実行するか否かです。
自分が聞き手の場合について、皆さんが聞き手である場合のポイントは、「自分に期待される反応」を想定した上で、自分が話すのと同様にロジカルシンキングのMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)とSo What?/Why So?を考えて聞くようにすることです。このときに「重複や漏れ」あるいは「話の飛びや流れの不明瞭さ」があった場合、話し手への的確な質問で、ロジカルシンキング的コミュニケーションが実現できます。
一般的に、「話上手かどうか」は早々に判断できるものですが、「聞き上手かどうか」はなかなか分かりません。それは、じっと黙ってうなずいていれば、話し手は「聞いてくれている」と感じるからです。しかし、問題は「ただ聞いている」だけでなく、「どれだけ注意深く、話し手の言わんとすることを正しく理解するか」なのです。実は、「注意深く聞く」とは、相手を観察し、思考力も対人能力も知性も感性もフルに活用しながら聞く、という意味を含みます。
多くの皆さんが既にご経験されていると思いますが、外国のビジネス環境では、「暗黙の了解」ではなく「明確なコミュニケーション」が重要な位置を占めますね。話し手の意見を受動的に聞くのではなく、能動的に聞く、またその際にも、「この人の論理は○○となっているから、XXXXと説明しているのだな」と常に話し手を支えている論拠を考えて聞くことはとても大切です。
そうやって聞いていると、万が一、話し手の言葉の中のある内容に「ん?」と感じたときにも、即座に適切な質問ができます。
サイコム・ブレインズの研修に「傾聴」を学ぶコースがあります。その中でのロールプレイで面白い場面を見たことがあります。
皆さん、このやりとりのどこに違和感を覚えますか?
Mr A「ドイツで仕事をしていて思ったのは、ドイツ人と日本人は似ているなということでした」
Mr B「私もそれを聞いたことがあります。でもドイツ人とイギリス人はうまくいかないことが多いようですね?」
Mr A「そうですか。Bさんはどうしてドイツ人とイギリス人はうまくいかないことが多いと考えてらっしゃるのですか」
さて、BさんはAさんの論拠・論点をどこまで理解しているでしょうか。日常でこんな場面を結構目にしませんか。
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