「マインドマップ」あるいは「マインドマッピング」という言葉を聞いたことがあるだろうか。Tony Buzan氏が提唱した図解技法で、記憶術やノート法、アイデアプロセッシングなどに効果があるとされる。日本でも数年前からのライフハックブームに乗る形で、マインドマップ的な情報整理、情報管理の手法について、さまざまな解説用書籍が発売され、書店を賑わせた。
合わせて、マインドマップ的な情報管理をPCを使って行うためのソフトウェアも数多くリリースされている。ブラウザからウェブサービスとして利用できるもの、フリーソフトといった無料のものから、数千円〜数万円の値付けがされたパッケージソフトまで、非常に幅広いレンジがある。実際に使ってみようと思っても、どれを選ぶべきか迷ってしまうほどの充実ぶりだ。
その中で、とりわけハイエンドな部類に入る製品のひとつにマインドジェットの「MindManager」がある。同社直販サイトからのWindows用最新版ダウンロードのライセンス価格は4万8299円と、フリーの製品も多いこのジャンルの中では異彩を放つ。
この価格付けについては理由がある。マインドジェット、チーフエバンジェリストの渡邉安夫氏は、「個人の頭の中にあるアイデアを"脳内地図"として展開する」という使い方が主流のマインドマップソフトがほとんどの中、MindManagerは明確に「個人や組織が、仕事を進めていく中で必要な情報の管理と共有を視覚的に行えるようにする」ことに主眼を置いた「ビジネスソフト」であると明言する。MindManager自体も「ビジネスインフォメーションマッピング」のためのソフトウェアであることを標ぼうしている。
搭載されている機能からも、その方向性をうかがい知ることができる。例えば、2009年にリリースされたバージョン8では、当時「Microsoft Office 2007」で取り入れられたリボンUIを他社製の製品としていち早く採用したほか、MindManagerのアプリケーションウィンドウ上で起動するOfficeドキュメントの編集機能などを搭載。Microsoft OfficeのOutlook、Word、Excel、PowerPointなどと組み合わせて、ビジネスの現場で使う製品であるというメッセージを強く打ち出した。
そのほか、バージョン8では、「Google」「Yahoo!」「Amazon.com」などが提供しているWebサービスをマップに埋め込める「マップパーツ」機能、クエリテキストの入力によるデータベースへの接続機能などが搭載されており、これも「散在する仕事関連の情報をマップとして一元管理する」というコンセプトに合わせたものだった。
* 共同作業機能が強化された「MindManager 8」発売--SaaS版も同時に提供開始(2009/03/12)
2010年秋にリリースされた最新版のバージョン9でも、その方向性は一層強化されている。マップ上のトピックとして作成したタスク(仕事)をOutlookに入出力できる機能、トピックの階層ごとに、内容をPowerPointスライドとしてエクスポートする機能といったOffice製品との連携強化に加え、新たに日時を指定したタスクを時間軸で一覧表示する「ガントチャートビュー」が、バージョンアップの目玉のひとつとなった。また、TwitterやFacebookといったソーシャル系ツールとの連携なども可能になっているという。
* ビジュアル情報管理ソフト「MindManager 9」発売--ガントチャート機能を標準装備(2010/10/07)
2010年末にリリースされた「MindManager 9」では、ガントチャートビューを標準搭載し、ビジネスでの利用によりフォーカスした
「個人の頭の中にあるアイデアをまとめる」という、仕事の初期フェーズから、「各所に分散した情報を1個所にまとめて管理し、ステークホルダー間で共有し、進ちょく管理を行う」という、プロジェクト管理のフェーズまでを、「マップ」という技法の上で展開するという、MindManagerのコンセプトがより明確に打ち出されている。また、このマップはプロジェクト終了後に「フレームワーク」としての再利用も可能だとする。MindManagerを活用したプロジェクト管理手法については、ZDNet Japanの連載(プロジェクト管理に悩む担当者必読--MindManagerで「見える化」実践!)に詳しいので、興味のある読者は参考にしてほしい。
Mindjetで米国、APAC地域担当の副社長を務めるAbe Smith氏
2月に来日したMindjet、米国、APAC地域担当の副社長を務めるAbe Smith氏は、「Mindjetのビジネスは、世界的に拡大のフェーズにある」とし、その理由として「世界的な不況」「コラボレーションの重要性の再認識」「情報の可視化に対するニーズの高まり」という3つのトレンドがあるとした。
「コンピュータによる視覚化の分野では、既に"ビジネスインテリジェンス(BI)"がメジャーとなり、成長を続けている。BIが最終的に企業活動に関する"データ"を視覚化するのに対し、MindManagerが標ぼうする"インフォメーションマッピング"は、ビジネスに関連するあらゆる情報を視覚化するものだ」(Smith氏)
Smith氏によれば、MindManagerはFortune 500に入る企業の80%以上で、MindManagerが何らかの形で導入されているという。利用分野は、研究開発を中心に、マーケティング、単発のプロジェクト管理など多岐にわたる。また、2004年に米国でハリケーンによる被害があった際には、連邦航空局により情報整理、災害復旧管理にMindManagerを活用した実績もあるという。
一方で、日本においてビジネスインテリジェンスツールや、PowerPointのようなプレゼンテーションツールが普及するのに長い期間が必要だった事実を振り返っても、同社が提唱する「インフォメーションマッピング」という考え方と手法が浸透するには、いくつかのハードルをクリアする必要がある。
Smith氏は、今後の施策として、企業内個人に対してインフォメーションマッピングのメリットを啓発、教育していくことを挙げた。また、製品自体も「ビジネスプロセスに影響を与えるアプリケーション」として、Office製品とのさらなる連携強化を含めた機能強化を進めていくとする。
同氏はかつて、シスコシステムズのコラボレーションソフトウェアである「WebEx」で新興諸国担当のシニアディレクターを務めた経歴を持つ。
「(WebExは)コラボレーション分野のサービスだったが、まずは企業内の一部の人にビジネスの生産性を高める点での有用性を認めてもらい、その後ライセンスを徐々に全社レベルにまで増やしていくというモデルは、WebExとMindjetで共通していると考えている」(Smith氏)
2011年は、日本スタッフの増員、販売パートナーの拡充といった施策を行い、前年比7割増のライセンス提供を目指すという。
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