2011年4月12日火曜日

中小ソフト開発会社にクラウドのビジネス考え方

 多くの中小ソフト開発会社の経営者が受託ソフト開発事業の将来性に不安を抱くものの、「何をしたらいいのか分からない」と悩んでいるのが実情だろう。国内の受託ソフト開発市場は縮小する一方で、中国などへのオフショア開発が急増している。そこに、クラウドサービスが急速な勢いで普及したため、売り上げがこの3年間で5割減った中小ソフト開発会社も少なくない。
 中小ソフト開発会社の経営者は「クラウドに参入する資金力はないし、技術力もない」と思うだろう。だが、数万円の安価なサーバーとオープンソースソフト(OSS)の組み合わせで、クラウド事業を始めることはできる。みんなのクラウドはこのことを教える。ハードやソフトの販売、システム構築とは異なるサービスビジネスなのだ。
 具体的には、みんなのクラウドへの出資会社にクラウド基盤構築の技術ノウハウを無償で提供する。SaaSなどサービスの販売方法も伝授する。中小企業でも「クラウドのオーナーになれる」ように、みんなのクラウドへの出資金は1万円にした。
 出資会社を増やす理由は二つある。一つは、サーバー台数を増やせること。10台のサーバーしか調達できない中小ソフト開発会社が100社集まれば、合計台数は1000の規模になる。各社が構築した共通基盤を連携させ、他社の持つサーバーをバックアップ用として使うこともできる。顧客が増えたら他社のサーバーを借りればよい。もっと増えたら米アマゾン・ドット・コムや有力企業のデータセンターを活用する方法もある。みんなのクラウドの基盤技術には、アマゾンがWebサービスで利用するOSSを使っている。
 もう一つは、SaaSなどのサービスメニューを増やせること。1社が一つのSaaSアプリケーションしか持っていないとしても、100社で100のSaaSがそろう。他社のアプリケーションと組み合わせたサービスビジネスを展開できる。大手ITベンダーがクラウド基盤の利用を中小ソフト開発会社に呼びかけているが、大成功した話は聞こえてこない。クラウド基盤の利用料金が高すぎるからといわれている。結果、ユーザーに役立つSaaSアプリケーションが増えず、ユーザーも増えない。中小企業が連合を組んで、その課題を解決しようというわけだ。
 中小ソフト開発会社がクラウド基盤を持つことで、解決できる課題はほかにもある。まず技術力の回復である。業務・業種アプリケーションの開発だけに追いやられた結果、中小ソフト開発会社は運用ノウハウを失ってしまった。基盤技術の人材を育成し、その力を取り戻すことができる。
 さらに、IT利用に対するユーザーの不満にも対処できる。「投資対効果が低い」と思ったユーザーがIT投資を削減したことで、大手ITベンダーや有力ソフト開発会社は中国など海外市場に活路を求めている。そうなれば、国内ユーザーへのサポートが手薄になる。中小企業を含めてITの効果的な活用に困っているユーザーは少なくない。
 そこに中小ソフト開発会社が安価なクラウドサービスを提供し、ユーザーにIT活用の改善策を提案するのだ。クラウドだけではなく、SNSなど新しい技術やトレンドをいち早く取り入れていく。こうしたチャレンジを通して中小ソフト開発会社は活躍の場を広げていけると思う。

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