クラウドコンピューティング(以下、クラウド)は、ITリソースを不特定多数の利用者が効率的に共有することでコスト分散が図られ、コストダウンが可能になることから注目されています。
クラウドの展開形態には大きく分けて「パブリック・クラウド」と「プライベート・クラウド」があり、クラウド事業者が提供するITリソースを不特定多数のユーザー同士で共有する形態を「パブリック・クラウド」、ユーザーが占有するITリソースを仮想化技術などを活用してクラウド化する形態を「プライベート・クラウド」といいます。
日本におけるクラウド市場は、パブリック・クラウドが先行する形で2008年に立ち上がりました。IDC Japanの市場予測によれば、パブリック・クラウド市場は2010年には対前年比41.9%増の443億円に達し、2014年には1,534億円(対2009年比4.9倍)まで拡大するとみられています。
パブリック・クラウドは「初期投資が不要」「迅速な導入が可能」「運用・保守稼働が不要」といったメリットが注目されていますが、その一方で、外部のITリソースを他者と共有することに起因する情報セキュリティー上の不安や、カスタマイズへの制限が大きいことによる柔軟性の低さなどの課題も指摘されています。
こうした課題を解消し、かつ、クラウドの利点であるITリソースの効率的な利用も実現するものとして登場してきたのがプライベート・クラウドです。IDC Japanによると、2010年のプライベート・クラウドの市場規模は1,240億円(対前年比26%増)で、既にパブリック・クラウドよりも大きくなっています。
金融機関をはじめ、個人情報を有する企業は今後もプライベート・クラウド化を進めるものとみられ、2014年の市場規模は3,750億円と、パブリック・クラウドの約2.5倍になる見込みです。
パブリック、プライベート双方のクラウド市場を合計すると、2014年に約5,000億円市場に成長することになります。さらに、クラウドの導入支援コンサルティングといった関連市場が生まれてきていることを考え合わせると、クラウド市場の裾野はさらに広がっていくといえるでしょう。
クラウド事業者は今後、「クラウドはサービス業」という位置付けで事業を展開していくとみられており、単なるコスト競争力だけではなく、提供できるサービスの多様性や、運用ノウハウなど事業者の総合的な質が問われる段階に入ってくるものと思われます。
クラウドはネットワーク経由でITリソースを利用するだけに、情報セキュリティー面の懸念のほかにも、レスポンスの問題や、そもそもネットワーク(特にインターネット)にトラブルが発生するとサービス自体が利用できなくなるといった不安があり、利用をためらう企業も多いようです。従って、より堅牢でハイセキュリティーなシステム開発に加え、VPN(Virtual Private Network)による接続や、ネットワークの冗長化、さらにインターネットを経由しないセキュアで高信頼なNGN(次世代通信網)による接続などが進展すれば、クラウド市場はさらに活性化していくでしょう。
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